〜鴨川〜京都御所〜護王神社〜円山公園〜

バスに乗りそのYの字の右上を上から下へ下っていった。前日左側にずっと続いていた桜並木がぷつっと切れた場所があった。その手前あたりくらいまで戻ってからバスを降りた。バス通り側は土手が比較的広く取られていて、ほとんどの人はそちら側の土手に各々思い通りに敷物を引いたり、そのまま乗ってきた自転車を土手に放り出したり、ちょっとした腰掛用のコンクリート椅子に座ったりしながら花見に講じていた。
いろんな種類の桜の木が並んでいる。デジカメに撮り収めながら南下していく。前日雑誌で見たようなお花見弁当を買ってから来ればこんな風流なところでホントの「桜まみれ」の花見ができたのに、と悔しかった。仕方なくコンビニに行って、調理パンで我慢してまた土手に戻る。よく映画やテレビなどで桜吹雪や桜の散るシーンを見るが、今日のこの一面桜の風景や風が吹くとハラハラと散るその様子は作り物では到底再現し得ない美しさとその花びらの数だった。
出町柳駅辺りに近づくと急にYの字のV部分の川原に学生たちがたまっているのが現れた。前日もここに大学生っぽいのがたくさんBBQを楽しんでいた。唯一真っ平らな場所なのだろう。急に都会に連れ戻されたような気がした。こうなると次の場所へ移動するタイミングだなと思った。

さて、中に一歩踏み入れると、その他の名所と違うなとすぐに感じた。建物の大きさ、作り、整備のされ方、植えられている数々の松の育ちかた、一つ一つがきちんとしている。国の象徴である天皇が代々住んできた場所だけに、その場所を保存すべく沢山のお金をかけてそうだなあと感じた。私の世代の人ならば、映画ラストエンペラーを思い出すだろう。その紫禁城の前庭に似た玉砂利や朱色の柱、皇室色の紫と菊のご紋、どれもエンペラーっぽい。極めつけは、承明門を通してみる紫宸殿。その宮殿の大きさ、その手前に敷かれた奥行き50mはあろうかという玉砂利、そしてそこに左右端から端までびっしり並んだ黒山の人だかり。紫宸殿の大きさをさらに雄大なものに見せてくれた。
左近の桜、右近の橘をひっさげた紫宸殿を見て周り、ぐるっと一周する感じで、出てくると池がある。皇室のそれらしく、広々とした水面に、苔むした土と松、瑞雲を配した橋。その他、御学問所や小御所などみて回ったが、御所の中は何がすごいって言うわけでなく、全体的な尊厳さを感じるその風格を感じ取れる場所として、見てきてよかった。皇宮警察の変わった色の消防車も置いてあって、思わず写真に収めてしまった。
その後御所を出て、蛤御門方向に歩いて行くと、桃林がある。今まで梅や桜は沢山見てきたが、本当のところ、桃ってどんな木?どんな花を咲かせるの?ときっと見分けがつかないだろうと思っていた。間近でみてみて、梅にも似た花びらと桜にも似た華やかさのある花だった。どうやら雄しべの数が梅のよりも多いように思えた。

誰が祭られているかよりも自分が気になったのはいのしし。境内のあちこちにいのししオブジェがある。狛犬ならぬ狛猪、御手洗の水を出すのもいのしし、お守りにもいのしし。猪コレクションも。自分的には重くてみっちりした物体が好きなので、ブタ、牛、象しかりでいのししもその存在コンセプトが好きだ。
実はこの神社は清麻呂が足が奇跡的に良くなったということでいのししを足の守り神として祭ってるようなのだ。足を悪くした母にはお守り、自分も最近足の調子が良くないので、いのししストラップを買ってつけた。
もう二つここで買い求めたものがある。一つが神社の門の外に書いてあった水出しコーヒー。京都に来てあまりコーヒーを飲んでいなかったので、これは美味しいのでは?と思い、いただいてみた。お守りとかと一緒に売っていた白いカップ&ソーサーに似た、肉厚白磁のカップに出てきたコーヒーはなかなかいける味だった。訪れてみる方は、ちょっと一服でコーヒーいただいてみてはどうでしょう。それともう一つは、かりん飴。かりんの木があるので、そのエキスを入れてるということのようだが、大してかりんぽい味がするわけではない。ただ、水飴の味がする古都にふさわしい味がした。

京都人の花見は東京のそれと違ってみんなきれいに静かにやってるなあと感心していたのだが、円山公園の花見客を見て、ああやっぱりこういうところはどこも一緒なんだなあと思った。ちょうど上野公園を思い出した。ブルーシートに酒の臭い。屋台に歌声。やっぱり人は酒と桜に酔いたいのだろう。
公園の真ん中にその枝垂桜はあった。一人の桜守が育ててきた桜だそうだ。 その桜、70年以上生きてきている。先代からの大切な宝物なのだろう。先代の子、兄弟にして今となっては可愛い自分の子どものような存在なんだろう。そんな自慢の子ども桜は、今年もまた沢山の人をここ円山公園で喜ばせていました。
円山公園を八坂神社の方へ降りていく。屋台や臨時のフードコートのような座敷が作られていた。焼きのいい臭いに誘われ、屋台のソース味に心奪われそうになったが、我慢して四条通りへと抜けていった。
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